2021年2月12日金曜日

『門』夏目漱石


天が波を打って伸びかつ縮んだ。地球が糸で釣るした鞠のごとくに大きな弧線を描いて空間に揺いた。


彼は門を通る人ではなかった。また門を通らないで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待



つべき不幸な人であった。

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