2021年2月12日金曜日

『虞美人草』夏目漱石


月はまだ天のなかにいる。流れんとして流るる気色も見えぬ。地に落つる光は、冴ゆる暇なきを、重たき温気に封じ込められて、限りなき大夢を半空に曳く。乏しい星は雲を潜って向側へ抜けそうに見える。綿の中に砲弾を打ち込んだのが辛じて輝やくようだ。静かに重い宵である。


宇宙の謎を解くためには宇宙と同心同体にならねばならぬ

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